移転しました。

約3秒後に自動的にリダイレクトします。

ほんとうに効くのか? ホメオパシー・鍼・ハーブ療法・カイロプラクティック・アロマ・サプリメント・・・・・?

移転しました。

深夜に、夜のとばりに、一日の終わりにヒトは何を思うのか? NEWS23の筑紫キャスターは、自らの終わりに闘病の床からWEB版“多事争論”を発信し続けた。
閑話休題―1991年ドイツの旅行者がイタリアとオーストリアの国境のエッツ谷で解けた氷河から5千年前のアイス・マンの“エッツィー”を発見した。ヨーロッパ最古のミイラの最後の食事はカモシカの肉で、純度99%の銅製の斧を持ち毛髪測定より銅の精錬職人であった可能性が高いらしい。また体の各所に刺青がありその80%が今日鍼治療で用いられている経穴と一致していた。エッツィーは世界最古の鍼患者ではないかと注目を集めたが、小生の気がかりは、彼が最後の晩餐に何を思いすごしたのか・・・・。


通常の西洋医療にもEBM(科学的根拠に基づく医療)の考え方が確立される以前には、代替医療Alternative Medicine)と似たような治療法が数多くあった。大英帝国大航海時代を制したのは、多くの海戦で勝利したことより水兵の第1死亡原因の壊血病を、偶然に見いだされたレモンを用いて予防したことにある。またクリミヤ戦争の傷病兵の死亡率はフローレンス・ナイチンゲールが病院の衛生状態を改善したことによって減った。これを彼女が統計学的資料で証明したことで感染に対する衛生予防の観念が高まった。後に医療統計は喫煙が重大な健康被害のもとになることを疫学的に実証したことで今の禁煙啓蒙にも繋がっている。
鍼がセンセーショナルに取り上げられたのは1970年代ニクソン大統領が未知の大国、中国を訪問した際にさかのぼる。同行の記者レストンが鍼治療をうけた体験をニューヨーク・タイムズに掲載しその後米国の医師たちがこぞって見学に押し寄せた。上海では鍼による局所麻酔のみで心臓の開胸手術を受けた患者が術中微笑む写真が、東洋への興味とともにエキセントリックに伝えられた。しかし、BBCテレビでは同様な手術のドキュメンタリーを2006年に放映した際に、実は患者は術前にミタゾラム・ドロペリドール・フェンタニールの前投薬が行われていたことがわかり、また他の多くの事例からも今日では鍼治療に70年代当時の称賛はみられない。
代替医療の専門家でもある著者らはタイトルに挙げた治療1つ1つをエピデンス・ベースで検証した結果、どうも通常の治療と同等かそれ以上の効果のあるものはほとんどなく、効果が認められたものでもその治療自体よりプラセボによる効果のようだ。


プラセボ効果」は、私は喜ぶであろうのラテン語でその効果は絶大だ。効果には2つの説がある。①条件付け説はパブロフ反応とも呼ばれ偽の薬や治療でも無意識に身体が反応し、免疫系や生理反応に大きな効果がある。米国の麻酔医ヘンリー・ビーチャムは第2次大戦中、前線でモルヒネが不足したため生理食塩水を注射し強力な鎮静剤を与えたかのように振舞ったところ、患者はたちどころに痛みや苦痛、不安をみせなくなった。戦後の狭心症の偽手術実験でも4分の3の患者で大幅な痛みの軽減がみられた。②期待説は意識的な心の持ちようが大きな効果を生むというもの、特に急性反応(痛み、腫れ、熱、昏睡、食欲不振)など生体の基礎的な防御反応は、この薬や治療を使えば回復すると期待すれば抑制しやすい。患者に薬を投与するときは錠剤より注射が、飲む場合は同量でも1錠より2錠が、看護師やTシャツを着た医師より白衣を着た医師からもらうとき効果が最大となる。良い面がある一方でプラセボ臨床試験(対象群を設けた多数試験からランダマイズされた)結果をゆがめてしまうため盲検法と2重盲検法が生まれた。これにより条件付や期待感は排除できる。第二次大戦に従軍した英国人アーチー・コクランはこのように得られた試験結果でさえさらに“批判的概要”を作成して定期的にチェックすべきとし、ずさんな試験は取り上げない“統計的レビュー”を行うことを提唱した。これは無批判の“WHOの報告書”とは異なる。1988年彼の没後も“コクラン共同計画”は継続され鍼治療については、プラセボ以上の効果がある病気はわずか(特発性の頭痛や吐き気の一部のみ)で、さらに著者の1人がエセクター大でおこなったニセ鍼を使った頭痛や吐き気の治療では本物の鍼治療との結果に有意差は見いだせなかった。また2007年にドイツで出された偏頭痛のメガトライアル(大規模試験)も同様であった。
プラセボの効果は絶大でありこれを利用しない手はないのではないかという意見もある。つまり上記の結果を隠蔽してでも鍼や他の代替医療に神秘性を持たせた方がプラセボの効果は高まる。しかし、この考えに著者らは最終章で警鐘を鳴らしている。2千年前にすでにヒポクラテスは“科学は知識を生み、意見は無知を生む“と述べていたがこれが実践されてきたのはごく最近のこととで、今こそ代替医療という名のトリックがはびこるのを食い止め本物の治療法を優先させるべきだとしている。ホメオパシー・鍼・カイロプラクティック・ハーブ療法のセラピストからのバッシングを覚悟の上で、切実な医療を欲しているたとえばガン患者など弱い立場の人たちから金を絞り、希望を持たせ、健康を損なう危険にさらすべきではないとしている。


―――筑紫さんは、TVのヒトになってからも“主流派”とは異なる切り口で激動の時代を伝えた。Bad Newsでも少しだけ前向きに、Good Newsでも少しだけ批判的に――最後の多事争論、“この国のガン”は、圧巻だ!! また、いち早くジャーナリズムにはふさわしくない映画とか舞台とかポップスをNEWSに取り入れる冒険をおこなっていた。だから筑紫さんの旅の終わりには、陽水の“最後のニュース”がよく似合う。NEWSにも、きっと語り手によってプラセボ効果はあるのだろう、だから “今、あなたにGood-Night ただ、あなたにGood-Bye” 。

代替医療のトリック

代替医療のトリック