移転しました。

約3秒後に自動的にリダイレクトします。

好奇心は、脳のビタミン!!

移転しました。

最近ドキドキするような出来事は、駅の階段を急いで昇り降りすることぐらいしか無くなった小生だが――昨年夏、少年時代からの憧れのNASAを訪れた。サターン5の噴射孔を背にヴェルナー・フォン・ブラウンを気取り写真に収まった。時代は移り好奇心は宇宙から内なる生命科学へ移行していったが、夢ははかなく、毎日口の中で穴を掘ったり埋めたり今は肉体労働に従事している。
閑話休題― 何年か前の師走の深夜、大学に残った旧友から映画“ロレンツォのオイル”が面白いよとメールをもらった。難病ALD(筋ジストロフィー)の子供を持つ親が、独学でオレイン酸とエルカ酸が有効なことを突き止める実話だ。一方長年、薬として使われてきたものでも、いまだに理由が解明されていないものがある。
病気で熱を出すのは、プロスタグランディン(PGE2)という体内物質のせいで、昔の人は、誰がどうやって見つけたか知らないがヤナギの皮を煎じて飲むと熱が下がると言い伝えてきた。この中にサルチル酸が入っていてどうもそれに解熱作用があるらしい。これを加工して薬会社がアスピリン(アセチルサルチル酸)を作った。どうやって効くかというと、前駆物質アラキドン酸(C20:4)をPGE2に変える酵素COXを阻害し熱を出さなくすることが解った。C20:4は始めから6つ目から2重結合があるため“オメガ6脂肪酸”とも言われている。2重結合がある物質は身体にいいとされ不飽和脂肪酸ともいわれ、始めから3つ目にある“オメガ3脂肪酸”のDHAなどは魚の脂注に多く含まれ血液をサラサラにする効果があるといわれ人気だ。先ほどのアスピリン(オメガ6)も血液凝固を抑えるため動脈硬化脳卒中心筋梗塞を防ぎ長生きに貢献している。  
しかし、同じCOXを阻害するNSAIDs(イブプロフェンなど)やインドメタシンは解熱作用のほかに腫れを抑える抗炎症作用があるが、アスピリンにはない。なぜ腫れに効かないのか長年研究されているが、いまだにこの最も有名な薬の謎は解明されていない。 


パーキンソン病は中脳黒質の主に身体の細かい運動をつかさどるドーパミン神経がなくなる病気。だから指先が震えたり、歩幅が狭くなったりする。俳優のマイケルJ フォックスみたいに若年者がなるのは稀で60歳すぎの男性に多く見られる。原因は神経末端のドーパミンの再吸収口(DAT)にドーパミンでなく農薬などでも使われているMPTPという毒物が入り込んでドーパミン神経だけが死んでしまう。コカインや覚せい剤などはDATをふさいでドーパミンが出っ放し状態なので幻覚や妄想をいだくのだ。
最近は芸能人や学生さんまでも押し入れで大麻マリファナ)を栽培したり吸ったりして新聞紙面を賑わしているが、でもこれは脳内物質の研究に役立っている。聴覚・視覚の精神が鋭敏になり陶酔感がえられるが、続けると幻覚や吐き気、常習性が出てくる悪い面もある。癌患者の鎮痛や鬱病注、いやな記憶を忘れさせ心的外傷後ストレス障害PTSD)などの治療にも効果が期待されている。マリファナを感知する受容体はもともと脳内物質を感知し精神を活性化するためのもので、90年代に多く発見されブームになった注。
ハンマー投げの室伏選手は2度ともオリンピック後にメダルを獲得したが、これは上位の選手がアナボリックステロイド(男性ホルモン)を使いアミノ酸吸収率を高め筋肉増強をしたことが発覚したため。通常はこのホルモンは人生で2度ピークがある。2度目は男性らしくなる思春期で1度目はお母さんのおなかの中にいる時期に脳を男性化するため一過性に出て出生時にはなくなってしまう。最近は女性より女性らしい男性や元男性タレントさんが人気だがこの1度目のピーク時の何かと関係があるのかもしれません。 
昔、筒井康隆原作で何度もドラマ化された “時をかける少女”では放課後実験室で倒れた薬ビンが混じり合いラベンダーの花に似た香りがタイムトラベルの原因となっていたが、海外では10歳にも満たないしかも男の子の胸が急に大きくなる事件があった。よく調べると、どの子もきれい好きで毎日ラベンダーオイル入りのシャンプーやクリームを使い皮膚からこの成分が取り込まれたのが原因だと解った。ラベンダーにエストロゲン(女性ホルモン)と似た働きがあり、飲むのでなく皮膚から取り込まれてよく効いたようだ。


最後は晩婚化少子化の問題。東京の未婚女性に結婚相手にどのくらいの年収を望むかアンケートを取ったところ600万円以上と答えた人が最も多く39.5%だった。実際600万円以上年収がある男性は3.5%しかいなく、しかもほとんどが40歳以上のオジさんだ。皆、若くて年収のある都合の良い男性がいつか現れるだろうとなかなか結婚しない。少子化で困るのは生産者人口(15〜64歳)割合の低下で、日本は世界で一番子供の割合が減っている。解決策は子供をたくさん産むしかないのだが興味深いのは2006年の出産年齢のピークは30歳、1970年代は少し若く25歳だったがどちらも、40過ぎるとほとんど子供を産んでいない。ところが1930年代は30代40代でも出産している。昔の女性というのは40過ぎても結構子供を産んでいたので高度経済成長期の生産者人口を長いこと支えられたのだ。政治家が対策をゴチャゴチャ言っているが早いうちに結婚しないと人口は増えない。相手がいないとか言うが、どうせ3〜4人の中から選ぶのだからと著者は学生結婚をすすめています。小生も、それに国が予算を出せば、学力向上による国際競争力と将来の生産者人口増加を見込めると思う。日本ではインドなどと違い理系離れがすすんでいるが、景気や社会構造がよくないと、今のことで頭がいっぱいで将来などに気が向かず、夢や希望を持てないせいかも知れない。たしかに何か発見したり発明したりしてもすぐにはお金にならないが――それでも、千人に一人の難病も、何億人もが使用してきた頭痛薬もそのなぜ、どうして?が解らずに科学の好奇心は続いていくと――?信じていたい!!


クインテッセンス出版 書評より

遺伝子が処方する脳と身体のビタミン―東京大学超人気講義録file 3

遺伝子が処方する脳と身体のビタミン―東京大学超人気講義録file 3