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糖尿病は氷河期の生き残り? コレステロールは日光浴で減る? 親がジャンクフード好きだと子どもが太る?あなたとipod はこわれるようにできている?

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運命のスイッチを切り替えられたら,とは誰でも一度は願う事だと思う.黄昏や夜明け前の紫光の刻は、不思議な予感がする。どうやらその操作が可能らしい!?
エンターテイメントの世界でも繰り返し取り上げられるテーマだ。TVシリーズ「トワイライト・ゾーン」の映画版でも悲惨な結末もあれば、ハッピーエンドもある.「このドアを想像の鍵で開けて下さい.新しい次元が広がります。音の次元、視覚の次元、心の次元,影と実態の交錯する、未知の世界。今あなたが踏みだそうとする世界が、トワイライト・ゾーンなのです―!」と.


閑話休題――いままで進化は、遺伝子の変異はコピーミスによる偶然の産物と考えられてきた。本当にそうなのだろうか? 目次には、そそられるタイトルが並ぶ。――「糖尿病は氷河期の〜.〜ipod はこわれるようにできている?」――これらのなぞ解きに入り込むきっかけになったのは著者・モレアム氏の家系に “鉄をため込む遺伝子病”ヘモクロマトーシスがあったからだ。
体の代謝には欠かせない鉄は、ほとんどの生物に好まれる。細菌もしかりで、ペスト菌は厄介なことに免疫系のマクロファージ細胞の鉄分までも利用してリンパ系で繁殖し、14世紀西ヨーロッパの人口を4分の1に減らした。しかし、ヘモクロマトーシスの家系のマクロファージは鉄を含まず,そのペストを粉砕できた。ペストで生き残った家系の多くにこの遺伝子が引き継がれたが,中年を過ぎると体に鉄が溜まりすぎ、瀉血献血でときどき血を抜かないと死に至ってしまう。今ではやっかいな遺伝子もかつては、黒死病と恐れられたペストの流行を生き延びさせた功労者であった。


氷河期の寒冷も人類を絶滅の危機にさらした。寒さに対抗するために,アイスワイン用の葡萄の実やアメリカアカガエルは、水分を排し細胞の糖分を蓄積し氷点を下げ生き残りをはかっている。小氷河期(ヤンガー・ドリアス)に遭遇した人類も多尿で水分を減らし体内でインスリンをつくるのをやめ糖の温存をはかった人々がいた。この、平常時に無用の遺伝子を受け継いでしまったのが?型糖尿病の人びとだ。
現代病の原因、悪玉の代表コレステロールも、実は体に必要なホルモン(エストロゲンやテストステロン)やビタミンDをつくる。ビタミンD合成に不可欠なもう一つの要素は太陽光(UVB)だが、紫外線は細胞増殖に必要なビタミンB9(葉酸)も破壊してしまう。この光線は視神経が感知してメラノサイトに指示を出し形成されたメラニン細胞が吸収する。そのため太陽光の強い地域の人びとは,肌の色が代々で濃くなり,葉酸を守るしくみをつくり、わずかな光でもビタミンDを合成できるアポリポタンパクEをつくるApoE4遺伝子を受け継いでいる。逆に光が少ない北欧の人びとは肌の色を薄くし光を吸収するだけでなくApoE4遺伝子も獲得しビタミンDを合成してきたが、代償として現代ではコレステロール値を増大させ、その余剰分は脳・心血管病のリスクを高めている。


2005年のNew England Journalでは,米国の子どもの2,500万人が肥満症で, 肥満児の増加で平均寿命も今後5歳は短くなると報告している。とくに母親の妊娠初期の食習慣が生まれ来る子供の代謝に影響する。では親がジャンクフード好きだと子どもが太る?これは親が獲得した、太るという形質を遺伝させる獲得形質遺伝とは違う。最近ある種の化合物が遺伝子に付着してその発現を抑制することがわかった。あらかじめ受け継がれた遺伝子という運命のスイッチのON/OFFをあやつる物質があるというのだ。2003年この後成遺伝学は1匹のアグーチ・マウスの登場で一気にブレークした。遺伝子の発現抑制をする物質の多くがメチル基を含むことから、これをDNAのメチル化と呼ぶようになった。実験群には餌にこれを含むサプリメントが与えられた。米国人の多くが好むジャンクフードはカロリーは高いが、これらの栄養素は不足している。
近年、特定のメチル化が、多くの成人病や癌などの発現を誘発すことがわかってきた。親や祖母の喫煙などは特にそれが強くあらわれるハイパー・メチル化を示す。さらに、統計的には戦後の出生率(特に男児)の増加、や9・11テロの時期の米国での男児の流産率の急増など母親の精神状態が種の保存に有利な産み分けを即す可能性も述べられている。


人間の細胞は、一定の回数分裂するとテロメアがなくなり自然死する。ところが癌細胞は、この賞味期限切れシールをはがしてしまい、テロメアーゼをONにして増殖をやめない。DNAのエラーに脅かされる前にアポトーシスや老化で死亡する機能は、個人にとって有益なのではなく、種にとって進化上有益なのだ。老化はi-Pod4の“計画された旧式化“のようなもので、生殖と世代交代は”種のアップグレード“戦略だったのだ。
世の中や個人には不都合な病気や老化に関わる遺伝子も、人類の存亡を賭けた種の保存には有効で、しかもコピーやジャンプや発現のON/OFFなどの機能を装備し、パソコンソフトも顔まけのUPグレードバージョンを発売し続けているのだ。旧型は、ウィルスや変異や文字化けを搭載したまま死を迎える。(もちろんあなたも!?)でも、1つお忘れなく、いまだ人間にとって未知の領域もあるのです。生まれる前のそのまた前の世代の精神世界やメチル化、光と影の狭間に位置する世界、科学と迷信の境が人間の持つ最も奥深い恐怖と想像力のはばたく世界、そうトワイライト・ゾーンみたいに――!?

クインテッセンス出版 書評より

迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか

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