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免疫革命 /The Immune System Revolution  安保 徹 著

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インサイドクライシス!!  進化の果てに得た文明は自らの体に急激な環境変化をもたらした。
ガンやアレルギー等の現代病根絶の鍵は、バランスで捉える免疫学とライフスタイル革命!?


”スローフーズ・スローライフ
健康・エコロジーブームで登場した言葉だ。昨今のストレス社会、過労、運動不足、冷房、ジャンクフード、は体の代謝を支配する自律神経を狂わせる。
72年にジョン・レノンは全米ネットTVショーに出演し環境問題、リサイクル、バイオティックフード、α波を用いたリラクゼーション音楽等をチャック・ベリーラルフ・ネーダー(環境活動家)らと共に披露している。驚いたことに現代のスローフーズ・スローライフと全く変わらない内容だ。その後、彼は過密スケジュールを絶ち日本での生活を含め自ら玄米を炊きパンを焼き、主夫生活(ハウスハズバンズライフ)でそれを実践している。
それはさておき
閑話休題−今回のテーマ『免疫』の2文字を見ただけでアレルギーを起こす諸氏も多いのではないでしょうか?かく言う私も今まで何度となくこの現代病のKey noteに抗体を作ろうと頁をめくったが2分としないうちに寝てしまう有様、―内外ともに流行りものに鈍感な私は、未だもって花粉症にもガンにもなっていないようだ。しかし単細胞の私にもガテンがいく!免疫論がやっと登場した。基礎研究による白血球、自律神経、エネルギー代謝を関連づけた生体防御システムの論理、そしてガン等の現代病はこのバランスが破壊されて起こるとする解釈は2元化されていて理解しやすい。
著者は、意志でコントロールできない自律神経のうち、身体の興奮をつかさどる交感神経が顆粒球と、そしてリラックスをつかさどる副交感神経がリンパ球と連動して白血球系のバランス(1.顆粒球60%、2.リンパ球35%、3.マクロファージ5%)を保っていることを発見した。
1.最も多い顆粒球は貪食能を高め細菌レベルの大きさの病原体を担当する。寿命が短く記憶学習能を持たないため同じ細菌に何度も感染を繰り返す。ストレス、過労、不眠、冷え等により交感神経が刺激されても急産生され、自己細胞や常在菌に過剰反応し化膿性炎を誘発する。2.さらに小さなウィルスなどの粒子(=抗原)はリンパ球が細胞膜にある抗体を放出接着させて処理する。一方、運動不足、過食、過保護等、過度のリラックス状態でも副交感神経は優位になりリンパ球増多により過剰免疫反応(アレルギー等)を起こす。3.マクロファージは異物の性質を見分けリンパ球に指示をだす、たとえば初めての異物には先ずヘルパーT細胞に伝え、さらにB細胞に増殖を促すため発症までに潜伏期間が存在する。そしてB細胞と異物との戦いの後の残骸の貪食も行う。最初の司令塔と最後の掃除屋をこなす根源的な機能を残す。

単細胞生物は全ての生物のルーツで捕食、消化、エネルギー取りこみ、異物処理を全てこなす。進化とともに多細胞化・分業化され、人体は本来持つ機能を分業化した細胞200種で構成されている。この例に漏れず血球も血管内皮細胞に(心臓のポンプ圧を高める管形成のため)、赤血球に(エネルギー酸素運搬)、血小板に(止血創傷治癒)、に分化した。白血球(1.2.3)もマクロファージ系の細胞をルーツに異物処理や変異自己細胞の探査等、生体防御のために分化した。
著者らの免疫論のキーポイントは進化上でa、新しい免疫系(胸腺、骨髄由来)が外来の敵に対し、b古い免疫系(消化管周囲、肝臓、外分泌腺)は内在する敵に対するという事の理解にある。
a、水棲から生命が陸上へ進化し肺呼吸により得られた高濃度酸素(血中濃度で5倍)を取り込み活発な活動により外傷の機会も増えて胸腺や骨髄が獲得された。胸腺は上陸の際にエラが胸郭内に落ち込んで形成された。この新しい免疫システムで産生されるリンパ球は外来抗原に対している。
b、逆に進化の上では古いが、異物に対するだけでなく自己細胞の変異を察知する免疫系(胸腺外分化T細胞、NK細胞、B1細胞)があることは近年解明された。ガン、加齢、移植後の急性免疫応答に深く関わる。つまり胸腺が加齢などにより萎縮した後も古い免疫系は健在で、老化で体内に溜まる劣化した異常細胞の処理にあたる。NK細胞(ナチュラルキラー細胞)はマクロファージからの分化間もない細胞でその貪食能をまだ残しておりガン細胞に対することで知られている。
また新しい免疫系が低下すると潜伏ウィルス(ex、ヘルペス)が暴れ出したり、古い免疫系が活性化して自己免疫疾患(膠原病)を起こしたりする。
さらに本書では、臨床において免疫力を高める療法を奨めており逆に長期的に免疫を抑制する現在スタンダードとされている対症療法に変革を求めている。
ガンにおいては侵襲少ない限局した手術は別にして副交感神経を抑制し免疫の働き(リンパ球数)を押さえ込むガンの3大療法(手術、抗ガン剤、放射線療法)との併用を否定している。これらは、ガン化した仕組み自体を無くすものではない。ガンはストレスや侵襲によって増殖した顆粒球の残骸等からのフリーラジカル活性酸素)などが正常細胞の分裂を司る遺伝子を傷つけ起こる。その変異細胞を探し処理するのが古い免疫系だ。実際人体では毎日百万個のガン細胞が生まれリンパ球よって処理されている。
また、治癒の指標はガンの大きさや転移の数やサイトカイン等の量ではなく治療開始後数ヶ月して白血球中のリンパ球が30%以上を越えるか、1500〜1800個/マイクロリットル以上のリンパ球数の回復するかが指標となっている。
以上をもとにした著者らの自律神経免疫療法では精神的ストレスの排除、食事、睡眠、血行改善(入浴、針による刺絡療法、按摩、運動)、リンパ球移入療法を奨めている。また治癒の際3分の2の患者に傍腫瘍シンドローム(発熱、節々の痛み等、自己免疫疾患様の症状)がでるがこれらは生体の反応であるので消炎鎮痛剤やステロイドで押さえ込むべきではないとしている。
アレルギーは、本来リラックスや快適を司る副交感神経も過剰に働き外来抗原に対する新しい免疫系が優位になるとアトピー気管支喘息、鼻アレルギー、花粉症等の不快症状をもたらす。著者はこれに用いられている対症的なステロイド療法に疑問を投げかけている。ステロイドコレステロール骨格を持つ物質で組織に残留しやすい。(スポ−ツ選手のドーピング剤=ステロイド、性ホルモン、ビタミンDも同様)外用した場合、沈着し酸化コレステロール皮膚炎を起こす。しかしこれを押さえ込むためさらに強力なステロイドを使用している。脱ステロイドは強いリバウンドが起こるため非常に困難であるが麻薬同様、体内から脱却をさせ自律神経−免疫系を整えないと原因療法の意味がないとしている。
今まで上記の疾患は外来因子によると考えられた為“新しい免疫系”の研究が主で細分化され全体像が見失われてしまった。著者はこの免疫学の方向を変革しないと、根本治癒はあり得ないとしている。また患者も原因不明、難治性などと言われ、気力を削がれがちだ。そこで交感神経の緊張を解くためには、精神面が重要で、ストレスを無くし治療に対しての前向きな気持ちや笑いの効能をあげている。副交感神経には、睡眠や生活パターン改善をして日内周期、年内周期を考慮し、その支配領域である消化器、呼吸器系に対し食事療法や呼吸療法を奨めている。
皮肉なことに現代病は、人類が進化の果てに手に入れた文明社会がもたらしたものでもある。 
つまり本書では免疫学と患者の生活、両方の変革が必要で、強いて言えば、文明のあり方、人間の生き方に“革命”が求められている。私もバーガーとコーヒー片手にどっぷり肩まで漬かった現代生活を送り、そろそろ“革命”が必要な世代だ!!
“革命”そう言えば、この言葉は最近耳にしないが−−ジョンの
You say you want a Revolution−
革命を起こしたいってあんたは言うけれどーー
−We all want to change the world
そりゃ誰だって世の中を変えたいって思っている。皮肉っぽい歌詞が頭をよぎった。
気が付くと朝の光と文明社会の足音がもうドアの向こうに迫っている。

免疫革命

免疫革命


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